ポスト2020 に向けた地域スポーツクラブの経営戦略

インタビュー

 

 2019 年新春も過ぎ、スポーツ界待望の東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会(以後、東京オリパラと称す。)開催に向け、いよいよ500 日を切りました。各競技種目での強化も順調に進み、本番での日の丸の掲揚にも大きな期待が寄せられております。私も元オリンピアンとして成熟社会での五輪大会が、地域にどのような社会的効果を生むか大変楽しみにしております。
 国の第二期スポーツ基本計画には、地域で継続的に行われるスポーツや運動の場づくりで、健康維持増進、地域コミュニティーの再生、国民医療費の抑制、健康経営の促進で現役世代での運動促進等々が盛り込まれ、東京オリパラが日本社会にとって大きな変革をもたらすと感じています。明るく元気で健康な日本を再生させるためにも、地域社会でのスポーツや運動ができる環境づくりが重要です。それなくして国民の継続的な運動実施率の向上はないと断言できます。
 地域社会においてスポーツや運動ができる受け皿を俯瞰すると、市区町村行政におけるスポーツ振興部局、スポーツ財団、体育協会、スポーツ少年団、日本レクリエーション協会、障がい者団体、総合型地域スポーツクラブ、スポーツ推進委員、サークル団体等が協力し合ってスポーツ界を底辺で支えることになっています。しかし実際は、各団体が単独での活動でボランテイアを中心とした運営が主体となっており、また運営者の高齢化も進み限界にきているようにも思えます。
 新しい理念をもって約20 年前に国策として創設が始まった総合型地域スポーツクラブは、現在全国に約3500 クラブが誕生しています。その中で地域のリーダーとして先進的な活動をし、一般企業同様に専門家の専任体制で雇用を確立するとともに、行政のパートーナーとして活躍している有益なクラブも多数台頭しています。その反面、行政・補助金依存の運営で自立が出来ないまま解散撤退しているクラブが散見されるのも現状です。今のままでは継続的安定的に国民のスポーツや運動に対するニーズに応えられないのではないかと危惧しています。
 前述した各団体は、スポーツや運動の場を地域に提供する点において大変貢献されているとは思いますが、商工会議所、観光協会、商店街連合会、青年会議所、医療機関、地域包括センター、民間企業、メデイア等のスポーツ分野以外の団体との地域連携を進めれば、地域のスポーツ関連資源がさらに有効的、効果的に機能していくようにも思います。
 来年の東京オリパラまでに地域スポーツと関係諸団体とが連携協働できる組織体制を強化することが、ポスト2020東京オリパラにおける地域スポーツの有効策になると考えます。具体的な戦略としては、画一的ではなく地域事情に合わせ、その地域に点在するハード面・ソフト面のスポーツ資源を吟味して、それらの資源を効果的・機能的に連携できる組織作りが今後必要と考えます。さらに、各資源を繋ぐだけでなくリエゾンさせることで強みを倍増させ、行政の縦割り組織を補完する民間主体での横ぐし連携組織となることが重要だと考えます。
 総合型地域スポーツクラブの一割(約300 クラブ)が、民間事業的な経営手法を積極的に取り入れる拠点クラブになれると確信しています。もちろん総合型スポーツクラブがオールマイティーではありませんが、総合型スポーツクラブには公共公益事業を行政と連携し、持続的な経営が期待できます。これら拠点クラブは地域事情を斟酌し、地域スポーツクラブを含む既存団体との連携強化を下支えする役割を担います。そして、クラブの自立はもとよりソーシャルビジネスとして組織の自立化(プロ化)を、地元商工会や企業を含め関係団体とともに進めていく中核組織に成長しなければならないと考えます。そのことがポスト東京オリパラの地域スポーツレガシーとして国民一人一人のライフステージにあったスポーツや運動の場の提供に繋がるものと考えます。
 本年6 月8 日(土)~ 9 日(日)に東京都大田区において第13 回全国スポーツクラブ会議を開催いたします。(※すでに終了)「総合型スポーツクラブが創る地域共生社会の実現」というテーマです。多くのクラブ関係者はもとより行政、企業、スポーツマネジメントを学んでいる学生の皆さんにご参集頂き、ポスト2020 は地域スポーツからとのメッセージを社会に高らかにアピールしたいと考えます。

NPO 法人地域総合スポーツ倶楽部・ピボットフット 理事長
(一社)おおたスポーツコミッション 理事長
公益財団法人日本スポーツクラブ協会 常務理事
桑田健秀

(2019年 クラブライフ春号より転載)

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